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YURI SATO
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「 声が聞こえたことは憶えている 」
出演 阿部真理亜
詩 布施琳太郎 宍倉志信
撮影・編集 佐藤友理
音響 大野希士郎 小泉泰一郎
「Delay」Project ( 2020 . 7 )
本企画は6名の参加者が行ったそれぞれ異なる形式の表現を、リレーのようにつなげたものである。
まず、布施琳太郎と宍倉志信が共同で詩を執筆。その詩に基づいて阿部真理亜がパフォーマンスを行い、これを佐藤友理が撮影・編集。
そして最後に、大野希士郎と小泉泰一郎が映像に音響を付けるという流れで制作が進められた。
こうしたプロセスの全体を通じて「ディレイ」、つまり遅延し、重なり合うことをコンセプトに制作を行った。
それは、2020年コロナ禍でのソーシャルディスタンシングを意識しながらも、
各参加者にとって今しかできない挑戦となるよう配慮した結果である。
ここで実験されるのは言葉とイメージ、そして身体が戯れる方法だ。
−−−−−−−−−
「確か、そう…」
int time;
「思い出せた?」「うん」
「最初の......本当30秒だよ」
「うん」
void Start () {
締め切ったカーテンの隙間から
ずっと何かを探している
一昨日から太陽は照らすのをやめた
月のきらめきもそろそろ休息に入るだろう
(そして
time = <image>
わたしたちは互いの唇を噛み
産声に溺れて死ぬ
}
void Update () {
//この世界には、はじめから誰もいなかった
//いちまいのフィルムが、ぼくとわたしを隔てる
//だからもっと遠くに立ってみたかった
//あなたが誰か、わからなくなるくらいに
//ここが何処か、わからなくなるくらいに
明日のことを思い出してみる
今日まではみんな、膿んでしまったから
やがて
やがて
if (time <= memory){
そのガラス板にはぼくが映っていた
水垢が付いて、曇ったガラス
いつからそこに放置されていたのか
思い出すことの困難がこの胸を膨らませて
}
else if (time >= memory){
そして
息を吸って、吐いて、再び火を付けた
「しゅぅ......ぱちぱちぱち」
「そんなに急がなくてもいいんじゃない?」
「ぱちぱちぱち」
「ああ、もう手遅れなのね」
「ぱちぱちぱち......ジュッ」
「......」
}
あれから9年経つが、結局僕は一度も部屋から出ていない
喉が焼け付くのも構わず、煙を吸って、吐いている
白と黒、二色の煙が黒く湿った焦げ目からニュルニュルと現れた
「ねぇ」
煙は明らかに交尾をしている
互いを孕んだ二つの色は、解け合って一つの色になる
「ちょっと」
二人きりの部屋
進まない時計
「ねぇ」
声はまだ聞こえない
「あなた誰?」
Debug.Log("声が聞こえたことは憶えている")
}
}
−−−−−−−−−
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